しかしながら、例えばE-1では当時U-22以外での初招集は昨年のJリーグでMVPを獲得した横浜F・マリノスの仲川輝人ただ一人だった。2022年の本大会まで見据えれば、確かに東京五輪の世代がフルメンバーのA代表に多く食い込んでくることが期待されるが、最終予選で新たな戦力になりうる94~96年ぐらいのタレントを軽視する結果になっていないかという疑問も生じてくる。

 いずれにしても、現在のスタイルを継続して行く限り、今後も主力はほとんど変わらないだろうし、23人のメンバーに入れ替わりが生じたとしても、サブの選手に代わって新戦力が入る流れになる可能性が高い。そうした中で主力のレギュラー争いに割って入るような選手が出てくれば頼もしいが、二次予選で森保監督が「現時点のベストメンバー」と語った顔ぶれが最終予選でも軸になるだろう。

 東京五輪のメンバーからすでにA代表の冨安、堂安、久保建英、板倉滉の他に、一人でも二人でも割って入ってきて、最終予選で活躍すれば森保監督がA代表と五輪代表を兼任する意味も大きくなるが、その前に3月と6月の活動などハードルは多く、そこをいかに乗り越えて東京五輪に向かっていくか、そして“ラージファミリー”は広がってもA代表の主力に食い込んで行きにくい状況をどうして行くのか、さらにシビアに手腕が問われてくる。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行