攻守の切り替えを素早くして、良い距離感で連動するという大まかなコンセプトはあるものの、相手との立ち位置の関係に応じたベースのプランニングが明確でないように見える。森保監督は「臨機応変」と語るものの、実際は選手のその場での判断にゆだねる領域が広い。それでも固定的なメンバーであれば柴崎岳、吉田、酒井宏樹といった経験ある選手を支えとしてチームに共有され、アジャストの解決を見出すことも可能だ。

 例えば、ボランチの柴崎と遠藤航が二人でかなりコミュニケーションを取りながら攻守のバランスを取り、縦の関係にするのか、フラットにするか、周囲との関係などを話し合っている。だが、そもそも、「こういう時はこのポジショニング」といった戦術的な設計の部分まで選手が経験則でイメージし、擦り合わせているのだとすると、セットが変わればビジョンも変わってしまう可能性が高い。

 ボランチでは橋本拳人が新たな主力候補として台頭しているが、各ポジションで主力が入れ替わりにくい状況にある。よく「誰が出ても同じプレーができることが理想」と言われるが、そのためには選手に判断させる以前に、試合に出る出ないにかかわらず、経験値の大小にかかわらず、共有できるガイドラインは必要だ。その上で状況に応じた判断や実行力に経験の差が出るのは当然だし、さらに個人の特徴の差も出てしかるべきだが、人や組み合わせが変わると情報共有がセットバックされてしまうのではチームが前に進んでいかない。

 もちろん、代表は拘束時間が短く、活動期間が飛び飛びになるし、招集するメンバーも変わるので、なかなかクラブのようにはいかない。それでもベースの部分が明確であるほど、試合の流れや相手に応じた判断もしやすいだろう。もともとあったリソースに、勢いのある選手を加えた構成で固定することで、二次予選は苦しみながらも4連勝という結果に結びついている状況だ。

 そうした問題がありながら、コパ・アメリカ、E-1といった欧州組招集の拘束力がない大会ではU-23の選手を多く招集し、形式上ではA代表としての活動となっているものの、実質的にメインは五輪代表の強化になっている向きがある。森保監督はA代表と現在のU-23メンバーを日本代表の“ラージファミリー”と表現しており、東京五輪で金メダルを獲得することを目標としながら、その後は最終予選でカタールW杯を目指すA代表に還元されると捉えている。

次のページ
主力は変わらず、周囲の視線もさらにシビアに