土合:企業のブランドやその製品・サービスが輝いている、ユニークで差別化されて魅力的なものであれば、タレント(セレブリティ)はいらないと思います。でも、輝きが弱かったらコミュニケーションのアテンションや信頼の強化にはなるし、輝きがまったくなかったら、むしろ必要ですよね。もちろん、日本の場合ですが。なので、自社のブランドやその製品・サービスの輝きを担当者がしっかり見極めることが、まずは大切でしょう。

足立:私はどちらかというと、セレブリティ広告に対しては否定派です。本来、タレントは製品・サービスにとって「余計な情報」です。なので、広告に対する認知は取れるけど、製品やサービスの便益の訴求にはマイナスと考えたほうがいいと思います。つまり、「見てもらう」という意味では有効ですが、たとえば、化粧品のセレブリティ広告を見た人が「このタレントはこの化粧品を使っている。だからいい化粧品だ」とは、決して思わないということです。それに、光ってるタレントほどいろんな業界の広告に出演しているので、セレブリティ広告は「差別化」にもならないと思います。

土合:たしかに、昔と違って今は、多くの人が広告の「裏側」を知っていて、消費者は「これどうせ、広告だよね」という見方をしている。それを前提でセレブリティ広告も考えたほうがいいでしょう。

足立:ゲームアプリのキャンペーンで今人気のアイドルグループのメンバーに出演してもらうと、たしかに爆発的に認知が上がりました。けれども、それで製品の魅力が訴求できてダウンロードにつながるかというと、とても微妙なんですよ。人気タレントを起用するのには「大金」がかかります。なので、本当にそれが必須なのかは、よく検討する必要があります。多くの場合、人気タレントを広告に使わないほうが投資効果的にはベターという結論になると思いますね。人気タレントはサイクルも速いので、ブランドの一貫性を保つためにも、使わないで済むなら、その方がいいでしょう。

土合:たしかにセレブなしで、できるのであればそのほうがいいですね。ただ私はそこまで否定的ではありません。コミュニケーションの効果を押し上げる要素として、広告に使えるものは、何でも使ったほうがいいと思います。

足立:いずれにしろ、「このタレントじゃないと成立しない広告」というのは、継続性や再現性がないのでやらないほうがいいでしょう。また、ブランドの一貫性を重視するなら、すでにブランドイメージが確立していない限り、今この瞬間だけが旬というようなタレントは広告では使わないほうがいいと思います。そのタレントのイメージがブランドのイメージになってしまうので。