昨年は企業の懐の深さを感じさせたCMもオンエアされた。一昨年から原田龍二を『大麦若葉』のCMに起用していた山本漢方は、昨年春の原田に関する一連の報道のため起用の継続に頭を悩ませたという。不祥事による契約終了も珍しくないが同社は継続起用を決定。原田が出演する年末特番のフレーズを模して共演者に「原田、アウトー!」「反省しろー!」などと叱咤させるCMを放送した。さかのぼれば1994年には宮沢りえが「すったもんだがありました」と私生活での騒動を連想させるセリフとともに笑顔で缶チューハイを飲むCMがヒットした。視聴者は元気な姿に安心するどころかこのセリフはその年の流行語大賞にも輝いた。

 広告は商品やサービスをアピールするだけではなく、スパイスの効いたユーモアや力強いメッセージ、心温まるストーリーなどの力で人の心を動かし、世の中の空気を変えることができる。過失にも許容の限度は当然あるが、誰かをたたいて楽しむのではなく、つまずいた人の再スタートを見守る余裕のある社会となれば、より多くの人がのびのびと自分らしく生きやすくなるのかもしれない。

 2020年を迎え、真のグローバル化・ダイバーシティに向けて、他者を許し、お互いの違いを認め合うムードを広告が作り出してくれることを願っている。

●CM総合研究所/1984年設立。「好感は行動の前提」をテーマに、生活者の「好き」のメカニズム解明に挑戦し続けている。平成元年から毎月実施しているCM好感度調査をもとに、テレビCMを通じて消費者マインドの動きを観測・分析しているほか、広告主である企業へダイレクトにコンサルティングを行い、広告効果の最大化および経済活性化の一助となることを目指す。