『Y!mobile』も同じく学割のCMに注目したい。11月末にスタートした『ワイモバ学割』のCMは、学生とその家族もサービスの対象となることをアピールするためにさまざまな親子がペアでダンスをする内容だ。ひときわ注目を集めたのは桑田真澄・Matt親子だろう。あまりCMに出演しない桑田が、人気急上昇中のMattとCM初共演を果たしたことが話題を呼んだ。CMでは、桑田とMattが「Matt、お前の道を行け」「は~い」と拳を合わせるシーンが印象的だ。独自の美を追究する姿勢で注目される息子に、自分の信念を貫くよう力強く励ます父親の姿を通して親子の信頼関係を描いた。

 いずれも周囲の評価に縛られず、自分で選んだ道を進むことを応援するメッセージを伝えている。CM好感度調査のモニターからは「年始めにふさわしい。自由にのびのびと生活したいものだと思わせるCMだと思う」(au)、「先生と学生が学生生活を思い切り楽しんでいる様子がすがすがしい」(SoftBank)、「実際も子どもの進みたい道に行かせている父、桑田さんとピュアな感じのMatt親子の関係がステキだと思う」(Y!mobile)といった、好意的な感想が多数寄せられた。

■大切になるのは受け手側の視聴者の寛容さ

 このほかにも個性や自分らしさの大切さを伝えるCMが見受けられる。P&G『パンテーン』は『#令和の就活ヘアをもっと自由に』プロジェクトのCMを昨秋にオンエア。画一的な“ひっつめ髪”ではなくさまざまな髪型で街を歩く就活生を映し、個性が尊重される就職活動を推進する取り組みを印象づけた。TBCはローラがストイックにトレーニングに励む姿や鍛え抜いたからだで鐘を鳴らす姿に「誰に何を言われても、信じた道を行こう。自分を貫く強さ。それこそが美しさ」というローラの語りを重ねたCMをオンエアした。

 こうしたメッセージCMが評価を集める一方、併せて重要なのは受け手側となるわれわれ視聴者の寛容さではないだろうか。昨今増加しているさまざまな炎上やバッシングは、情報発信側のリテラシーや想像力不足のみが原因ではなく、自分と異なる価値観や認識を排除する不寛容さによるところも大きいだろう。自分らしさを応援するとともに、広告の力で世の中をもう少し優しく寛容にすることはできないだろうか。

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寛容といえば原田龍二の『大麦若葉』!