なかでも強烈だったのが、蛇のマムシである。94年12月25日、千葉県流山市民総合体育館での『ノーロープ有刺鉄線ランバージャック猛毒マムシデスマッチ』(レスリングユニオン、ポイズン澤田vsザ・マミー戦)。リングとサードロープ間にサランラップ状の布で壁を作り、ケースに入ったマムシがコーナーに設置された。ここまで来るとプロレスと言えるのかわからない、まさにカオスな空間が広がった。

 行き着くところまで行った感のあったデスマッチ。そこに待ったをかけたのが、結果的に興行をおこなう会場側だった。

「聖地・後楽園ホールで火を使ったり二階からのバルコニー・ダイブができなくなった。プロレス・ファンがある意味、一番好きな会場でデスマッチをできなくなったのは、やはり大きかった」

 デスマッチが最大のウリであるフリーダムズ。社長であり自らリングにも上がり続ける佐々木貴は現状を語ってくれた。

「『血が会場内の床や壁に1滴でも付着するのはダメ』という会場もある。確かに我々のウリであるデスマッチは流血が魅せ場。でも、例えば他の競技でもぶつかったりして鼻血とかが出てしまう時もある。野球やサッカーでも流血はある。そればかりはどうなるかも予想できない。会場を探す方としては本当に難しくなった」

 また全国的にデスマッチ開催に適した会場も少なくなっている。これは20年の東京五輪へ向けて改修等が集中、音楽業界のライブ開催会場が不足したことと似ている。

「全国的に閉鎖される会場が出てきている。我々のような中小団体が使うのに適したサイズの箱が極端に減っている。実は2019年はフリーダムズ10周年で記念大会をやりたかった。でも後楽園ホールより少し大きい2000-3000人規模の箱が見つからなかった。悔しかったですね。今後はそのクラスの箱を見つけていくのも、僕の課題」

 それでも、いまだに牧歌的で開放的な会場も存在するという。そういう会場に巡り合えた時の喜びは大きい。

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「デスマッチもいろいろ出尽くした感はある」