今回のオリンピックは、日本人選手たちにとって「自国開催」の大きなメリットがあります。それがどんなところにあるかについても、少しお話ししましょう。

 まず、時差がないことや日本の気候で競技ができること。そして、海外遠征では必須となる予防接種を受ける必要がないなどの利点があげられます。それ以外に、大会期間中は、選手の体調管理とコンディショニングも重要です。選手にとって、食べ慣れたバランスの良い食事とからだのケアが不可欠。日本にいることで、遠征時のようにわざわざ携帯せずともいつも食べているものをいつも通り食べることができるのは、選手にとって有利です。

 また、からだの疲労をとるため、海外開催の場合には選手村の外に酸素カプセルやアイスバスなどを備えた日本選手専用のケア施設を設けるのですが、国内であればそれも不要です。選手たちはそれぞれいつものやり方で、からだのケアやメンテナンスをすることが可能で、ベストコンディションを保つことができるでしょう。

 以上のように、スポーツ医学分野での一通りの準備は、すでにできています。しかし、昨年、急にオリンピックマラソンと競歩の競技会場が札幌に変更になるという、予期せぬ事態もありました。それでも、札幌での医療体制も整備が進んでいます。

 開会式まで、残すところあと半年あまり。オリンピアン、パラリンピアンとともに、五輪に参加するスポーツ医たちのカウントダウンも始まっています。

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松本秀男

松本秀男

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

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