選手村における医療サービス、各競技会場での競技中の選手のけがや病気に対する治療ばかりでなく、数千~数万人規模となる観客たちの体調不良にも対処できるように、会場には観客を対象とした医務室も設けられることになっています。その数は、一つの大会会場で、選手用に1カ所、観客用に1万人に対して1カ所準備することを、国際オリンピック委員会(IOC)は要請しています。

 1カ所の医務室には医師1人、看護師2人ほどが配置される見込みで、例えば開会式・閉会式がおこなわれる収容人数約7万人のオリンピックスタジアム(国立競技場)の場合、選手用1カ所、観客用7カ所の計8カ所の医務室が設置されるので、必要な医師数は最少8人/日となります。オリンピック・パラリンピックで利用される会場施設は全42カ所あり、観客数の予想は1000万人とされていることから計算すると、のべ1000人以上の医師が必要となります。

 さらに、選手の治療をおこなう後方支援病院であるオリンピック病院・パラリンピック病院も確保しなければなりません。IOCから委託を受けた日本オリンピック委員会(JOC)は、会場施設に近いいくつかの大病院をあらかじめオリンピック病院・パラリンピック病院として選定しておくとともに、各競技会場と選手村に救急車を待機させて、大会中の傷病者のスムーズな搬送、受け入れができるように態勢を整えています。

 そのほか、パラリンピックの期間中には適切な医療スタッフを配置し、さらに協賛企業と協力してアスリートに対する義肢、装具、車椅子の修理サービスを提供できるようにしています。

 三つ目は、大会が終わった後のスポーツ医学におけるレガシーをいかに残すかという取り組みです。ハード面では、たとえば会場となった競技場を、高齢者を含む一般市民の健康スポーツ推進のために活用することがあげられます。またソフト面では、一例としてトレーナーの資格制度の課題があがるでしょう。現状では、医療行為をおこなえるのは医師、看護師などに限られています。しかし、すべてのスポーツ現場に医師や看護師が帯同するには限界があります。今後、初期治療をおこなえるようなトレーナーの教育システムや認定システムを作っていくことが求められています。

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選手たちにとっては自国開催は大きなメリットも