かつて、1980年代から2000年代にかけて活躍したジョン・フランコという左投手がいた。全盛期はレッズやメッツでクローザーとして長く君臨し、通算424セーブを挙げた名サウスポーだ。そのフランコも39歳となった2000年頃にはさすがにクローザーの地位を失ったが、それでも主にワンポイントリリーフとして重宝され、44歳まで現役を続けることができた。

 その結果が歴代3位の通算1119試合登板だ。もしフランコの現役時代にスリーバッター・ミニマム・ルールが導入されていたら、彼の現役生活はもっと短かっただろう。フランコが浴した恩恵を受けられない現役の左投手たちが、本来ならもっと長かったかもしれない現役生活を短く終えることになるのは想像に難くない。

 現役引退まで追い込まれずとも、投手1人あたりの投球イニング数が増えて継投機会が減るのはリリーフ投手にとって死活問題になる。なぜならリリーバーたちの出来高ボーナスの条件には、登板試合数が設定されていることが多いからだ。これから新たに契約する投手は問題ないだろうが、複数年契約を結んでいる最中の投手は気の毒なことになるケースが増えると予想される。

 つまり今季はこれまで左打者との対戦をメインで考えていればよかったサウスポーたちにとって、生き残りをかけた重要なシーズンになる。右打者でも抑えられると証明できなかった左投手たちは必然的に淘汰されるだろう。

 現役のリリーフ左腕で分かりやすい例を挙げてみよう。サンプルは昨季はインディアンスでプレーしたオリバー・ペレスだ。昨年38歳となったペレスは67試合に登板したが、投球回数は40回2/3と平均すれば1登板あたり1イニングを投げない典型的なワンポイント型で、1イニング未満だった登板は49試合もあった。

 ただしシチュエイショナル・レフティといえども試合終盤ともなれば相手も右の代打を送ってくるケースも多いため、実際の対戦機会は左打者が95打席で右打者は78打席とイメージほどの開きはない。それでも対左は被打率2割7厘なのに対し、対右は2割8分6厘と大きな差が出た。ペレスにとってはやはり右打者との対戦は避けたいところだろう。だが新ルールが導入された今季は右打者との対戦がさらに増えることが確実。結果を残せないようならば今シーズンが現役ラストイヤーになってしまうかもしれない。

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長引く炎上にファンは興ざめ?