内閣府が作成した「避難所運営ガイドライン」にも、「復旧期(4日目以降)は、簡易ベッドを確保すること等が期待」、「すべての被災者が安心してトイレを利用できるよう、障害者や女性等の意見を積極的に取り入れる」と書かれている。にもかかわらず、日本では避難所生活を原因とした災害関連死が多いのはなぜか。岡本氏は言う。

「日本では『被災者はガマンするもの』という考えが強く、避難所の環境に不満があっても声に出さない人が多い。被災者も、避難所を運営するスタッフも、災害救助法や国が示したガイドラインをよく理解し、『トイレが足りない』『ちゃんとした温かい食事を出してほしい』という要望が、健康を守るために必要であることを知ってほしいと思います。それは、平時からの避難所運営訓練の質の向上や、備蓄品の充実にもつながってくるはずです」

 いざという時のために、一人ひとりが避難所運営のガイドラインを知っていることが、自らの健康を守るための武器になる。

 前出の宍倉氏も、災害から自らを守るためには「知識が必要」と話 す。

「自分の住んでいる地域は過去にどのような災害があり、どのようにして街ができたのか。地震、洪水、土砂崩れなど、地域の災害の歴史を知ることで警戒すべきところがわかり、心構えや準備ができるようになります」

 天災は避けることはできないが、被害は減らすことができる。一年のはじまりに、「知識の備え」も十分にしておきたい。(AERA dot.編集部・西岡千史)