こう見ると、近年の紅白では大物男性歌手で“紅白卒業”が進んでいることがわかる。

 出場回数だけでみると、ポルノグラフィティが8位で13回、EXILEが9位で12回となっている。ただ、ポルノグラフィティは平成26(14)年を最後に出場なし。EXILEは今年は出場せず、福岡ドームで三代目 J SOUL BROTHERSらと一緒にカウントダウンライブを行う。11位で11回出場の嵐は、20年末で活動休止することが決まっている。

 では、今後も紅白に出場しながら令和時代の活躍が見込めるのは誰だろうか。平成5(93)年に「MELODY」で初出場した福山雅治は、平成21(09)年に「はつ恋」で2回目の出場をするまで紅白に出ていなかった。しかし、その後は11回連続出場(11位)し、今年は「デビュー30周年直前SPメドレー」を披露する。現在ではコンサート会場からの中継出演が定番となっている。

 13位で10回出場のゆずは、平成29(17)年に「栄光の架橋」で大トリも務めた。ミュージシャンとしての実力もさることながら、幅広い年代に人気がある。「国民的番組」である紅白と相性がよく、今後も出場が期待できそうだ。

 もちろん、出場経験がなくても、実力のあるミュージシャンは多い。その点では、NHKも紅白の出演依頼に苦労している様子がうかがえる。

 特に今年は、朝の連続ドラマ小説『なつぞら』の主題歌「優しいあの子」を歌ったスピッツの初出場が期待されていた。番組関係者もアプローチしていたことを認めていたが、結局は出場なし。昨年、大トリで特別出演したサザンオールスターズは歌手別視聴率1位の45.3%、初出場の米津玄師は同2位の44.6%を記録したが、いずれも今年は出場しない。

 紅白は、数日間にわたるリハーサルで拘束時間が長いなど、ミュージシャン側にとって出演のハードルが高い番組だと指摘されてきた。「大晦日といえば紅白」というのは多くの人の生活の中に今でも根付いている。実力派の人選を実現するためには、これまでの慣習を見直す必要があるのかもしれない。今年の紅白を見ながら、令和時代の「新しい国民的番組の姿」を考えてみてはどうだろう。(AERA dot.編集部)