今回も大トリを務めた劇団ひとり(C)朝日新聞社
今回も大トリを務めた劇団ひとり(C)朝日新聞社

 テレビ東京で毎週土曜深夜に放送されている「ゴッドタン」は、お笑い好きに根強く愛される番組として知られている。ほかの番組とは一線を画すようなオリジナルで挑戦的な企画も多く、芸人や業界関係者の間でもファンが多い。

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 そんな「ゴッドタン」の数ある名物企画の1つが「芸人マジ歌選手権」である。この企画では、牛乳を口に含んだゲストたちが、笑いをこらえながら芸人が真面目な内容の歌を歌うのをじっと見守る。芸人本人が格好つけて真剣に歌っていればいるほど、それがおかしく見えてくる。

 この企画が生まれたきっかけの1つは、”東京03の角田晃広が作っているオリジナルソングが笑える”、ということだった。ただ、本人はいたって真面目に曲作りをしていたため、それが面白いということに気付いていなかった。その笑いを際立たせるために、牛乳を口に含んだゲストが笑いをこらえながらそれを見守る、という演出が加えられた。ここから「芸人マジ歌選手権」が始まった。

 その後、企画はどんどん発展していき、「マジ歌シンガー」として芸人が一種の歌ネタを披露するような形式に落ち着いた。その中でも、劇団ひとりは大トリを務め、特殊メイクを駆使して田原俊彦とグレムリンをかけ合わせた「トシムリン」などのさまざまなキャラクターを演じて、見る人の度肝を抜いている。

 その最新回である「ゴッドタン 芸人マジ歌選手権」という1時間半の特番が12月27日に放送された。マジ歌シンガーとして出演したのは、バナナマンの日村勇紀、ロバートの秋山竜次をはじめとする豪華な顔ぶれ。彼らが次々に繰り出す本気のパフォーマンスは実に見ごたえがあった。

 本来、「芸人マジ歌選手権」の「マジ」とは「本気」「真剣」という意味だ。だが、今回の「マジ歌選手権」では、「本音」という意味のマジ歌作品が多かった。それぞれのマジ歌シンガーたちが、自分たちが普段思っていることを歌に乗せて表現していた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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劇団ひとりは自分の理想像をリアルに歌い上げる