もちろん、認知症になったことで暴言が増えたり怒りっぽくなったりする人もいます。


 
 では、その差は何から生まれるのでしょうか?
 
 認知症で一番困るのは、認知機能の低下よりも随伴症状だと言われています。物を取られたという妄想が起きやすかったり、一人歩きしたり、興奮して大きな声で怒鳴ったりする。患者さん本人もつらいのですが家族もどう対応していいのか困ってしまいます。

■本人の性格が認知症になった時の随伴症状に与える影響 

 認知症に伴う随伴症状は「BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」と呼ばれ,興奮や攻撃性,脱抑制などの行動面の症状と不安やうつ,幻覚・妄想などの心理症状があります。

 BPSDが起こる背景には,認知機能の障害に加えて,体の要因や環境の要因,心理的な要因などが影響します。しかし,実は認知症になる前のその人の性格が,認知症になった時のBPSDの発生に関連することがわかってきました。

 本人の性格が認知症になった時のBPSDの症状とどのような関係があるのか、18カ月間にわたり237人の患者さんを調査した結果があります。

 もともとの性格を(1)神経症傾向(情緒不安定)、(2)誠実性、(3)外交性、(4)開放性、(5)調和性の5項目にわけ,その後認知症になった際のBPSDとの関係を調査した結果、誠実な人は精神障害幻覚や妄想,うつ、アパシー(無気力)になりにくいと出ました。

 逆に神経症傾向が強く,情緒が不安定になりやすい人はうつになりやすく、意欲も低下しがちで、睡眠障害にもなりやすいというのです。また開放的な人や外交的な人も、うつになりにくいことがわかりました。
 
 これはどういうことを意味すると思いますか?
 
 年齢に関わらずにこの5項目を普段の生活から意識して修正していくことで、もし認知症になっても,穏やかな日々を過ごすことが期待できるのです。

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