「STAR21」の新潟寄り先頭車・953―5号車。横幅いっぱいに平坦なくさび形が特徴(C)朝日新聞社
「STAR21」の新潟寄り先頭車・953―5号車。横幅いっぱいに平坦なくさび形が特徴(C)朝日新聞社
JR西日本が開発した500系900番代「WIN350」。写真は運転室が盛り上がった新大阪寄りの先頭車、500―906号車(C)朝日新聞社
JR西日本が開発した500系900番代「WIN350」。写真は運転室が盛り上がった新大阪寄りの先頭車、500―906号車(C)朝日新聞社
JR東海の955形「300X」。写真はカスプ型先頭形状の新大阪寄り先頭車955―1号車(C)朝日新聞社
JR東海の955形「300X」。写真はカスプ型先頭形状の新大阪寄り先頭車955―1号車(C)朝日新聞社
JR東日本のE956形「ALFA―X」。写真は新青森寄りの10号車で、ノーズの長さは約22メートル。1両のほとんどがノーズにあてられ、客室はごくわずか(C)朝日新聞社
JR東日本のE956形「ALFA―X」。写真は新青森寄りの10号車で、ノーズの長さは約22メートル。1両のほとんどがノーズにあてられ、客室はごくわずか(C)朝日新聞社

 年末年始に新幹線を利用した方も多いだろうが、“速い、快適”な新幹線は、さらなる進化を着々と進めている。「ALFA-X(アルファエックス)、かっこいい」「アルファエックス、鼻、長っ!」と、2019年5月に試運転が始まってすぐに話題をさらっているのが次世代型新幹線「ALFA-X」だ。

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 もちろん最新の「ALFA-X」以前にも、高速試験車両によって研究が積み重ねられ、試行が重ねられた――。今回は、そんな高速試験車両の挑戦の軌跡を振り返ってみよう。

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■時速425キロ達成の「STAR21」

 1990年、JR東海は300系の量産先行試作車を登場させ、次の新幹線では時速270キロ運転を行うことを発表した。

 当時、航空料金と新幹線の価格差が小さくなり、東京~大阪間の旅客獲得争いが始まっていた。東海道新幹線の最高速度は時速220キロ。航空機と勝負をするには東京~新大阪間を2時間30分で結ぶ必要があり、最高速度として時速270キロが産出された。こうして新幹線の最高速度は一気に引き上げられていくことになる。

 1992年3月、東海道新幹線に「のぞみ」がデビュー。時速270キロ時代の到来と時を同じくして、JR東日本も高速試験車両をデビューさせた。その愛称は「STAR21」。「21世紀の素晴らしい電車」という意味合いが込められていた。

 興味深いことに、形式名は952形と953形の2種類からなる。1~4号車は952形で、1両に対して2つの台車がある一般的な構造、5~9号車の953形は2両の連結部にかかる形で1つの台車がある連接構造だった。両形式で違う先頭形状や台車構造を採用したのは、1本の編成でさまざまなことを試してデータを集積し、その効果を知ろうとする意欲の現れだった。

 この「STAR21」では、騒音対策の中でも特に風切り音を中心とした「空力音対策」を念頭に置いて、車体の徹底的な平滑化を実施した。機器類の配置の見直し、車体表面の段差を徹底的になくすこと、必要な部分へのカバーの取り付けなど、当時の考え方の範囲でできることをやり尽くしたような車両だった。

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時速425キロを達成! インフラ技術も向上