高井が亡くなった翌日の一般紙の訃報欄は写真もなく小さいものだった。だが世界一の本塁打王と呼ばれるのは、王貞治と高井だけである。

 現在、日本シリーズではパ・リーグがセ・リーグを凌駕している。その一因に指名打者を軸にしたパワー重視の野球が全盛を極めている点がある。そこに高井の残像を見てしまう。

 代打本塁打27本目を打った彼のバットは今、野球殿堂博物館に大切に展示されている。

●澤宮優(さわみや・ゆう)/2004年『巨人軍最強の捕手 伝説のファイター吉原正喜の生涯を追う』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。著書に高井、桧山進次郎、八木裕ら代打の活躍を書いた『代打の神様 ただひと振りに生きる』(河出書房新社)『スッポンの河さん 伝説のスカウト河西俊雄』(集英社文庫)など多数。