動物全体で寿命を比較すると、小さい動物ほど寿命が短く、大きい動物ほど寿命が長い傾向があります。これは大きい動物ほど、成長するのに手間がかかるので、長く生きるほうが生存に有利であるという生物進化の結果です。

 家の建て替えで考えてみましょう。家を建てたけど、生活スタイルが変化したり傷みが激しくなったりしたとき、取り壊して新しい家を建てたくなります。でも、大きな家を建ててしまったときは、取り壊すのがもったいないですし、また同じくらい大きな家を建てるのには、お金もたくさん必要になります。そこで、取り壊さずにリフォームして、部分的に修繕したり使いやすくしたりするのです。

 動物の寿命もそれと一緒です。小さい動物は、傷ついてうまく生活できなくなったら、早めに次の世代に交代したほうが効率がよいのです。それに対して大きい動物は、次の世代に交代するのに時間とエネルギーが必要で、そう簡単には交代できません。そこで、傷を治したり新しい環境に合わせたりと、うまく生きていくためのリフォーム作戦をとっています。その結果、寿命が長いのです。人間も大人に成長するまで時間がかかりますので、リフォーム作戦をとっています。

 近年の生物学の発展で、こうしたリフォーム作戦の数々の命令が、遺伝情報に格納されていることがわかってきました。つまり、遺伝情報の中に、「このくらいまでリフォームを続けるけれど、これ以上問題が大きくなったら、リフォームはやめて建て替えだ」という大ざっぱな基準が設定されているようなのです。

 今後、医学や生物学がさらに発展すると、この基準を変える方法が見つかり、えんえんとリフォームをし続けることができそうです。そうすれば、人間の寿命は大きくのびるにちがいありません。でも、寿命がのびると、ますます「どのように生きるか」が重要になってきますね。

【今回の結論】200歳まで生きられる可能性あり

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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