【FW】


1位:仲川輝人(横浜F・マリノス)

 15得点9アシストでチームの優勝に大きく貢献。また多くのゴールが勝利に直結する時間帯、シチュエーションのもので、引き分けがリーグ最少の4だったのも勝ち点1を3に変える彼の働きが大きかった。右サイドからカットインや流れる動きでゴール前に顔を出し、エリキやマルコス・ジュニオールとの鮮やかなコンビネーションでゴールネットを揺らす。そこだけ見るとスピードやシュート力の高さにフォーカスされるが、サイドのディフェンスをしっかりとこなしながら、高いボールポゼッションを誇るチームの流れに応じて、いつサイドに張り、いつ中央に入っていくかという判断の精度が非常に高かったことが結果に表れている。また一見して個人能力を発揮したゴールシーンも、少し巻き戻して見ればチームとして攻撃のプロセスを組み立てて最後は仲川というビジョンが共有されており、F・マリノスのスタイルを象徴する評価として捉えてもらいたい。

2位:ディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)

 “理想的な外国人助っ人”という表現が適切か分からないが、2シーズン続けてパフォーマンスを落とさずゴールを積み重ねたことは見事だった。昨シーズン大活躍した選手がパフォーマンスや不調でなかなかゴール数を伸ばせない中で14得点を記録し、9得点の永井謙佑とともに強力2トップとして相手チームの脅威であり続けた。縦に抜け出してのフィニッシュを最大の武器としながら、クロスに合わせて良し、ドリブルからシュートに持ち込んで良しとFWとしての万能性も安定した得点力に繋がっているようだ。

3位:興梠慎三(浦和レッズ)

 FWとして分かりやすい数字で評価するならドウグラス(清水エスパルス)、ダビド・ビジャ(ヴィッセル神戸)、小林悠(川崎フロンターレ)、鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)を優先的にあげるべきだが、実際に試合を観ている時の存在感、起点としての働き、少ないチャンスを仕留める技術と集中力といったものを評価するなら、J1でもナンバーワンと言える。監督交代など混迷を極めた浦和レッズがACLファイナルまで勝ち進んだ最大の理由もこのエースの存在であったことは間違いない。シュート42本で12得点、決定率28.6%は得点ランキング上位者の中でも飛び抜けていた。特別、確実なシチュエーションだけでシュートを打っての数字ではないだけに、それだけエースにチャンスをもたらせなかった浦和のチームとしてのパフォーマンスの乏しさを表しているとも言える。もし彼がどこかで離脱でもしていたら、ACL決勝どころかJ1残留も危なかったことだろう。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行