【SB】


1位:室屋成(FC東京)

 長谷川健太監督が植え付けてきたタイトなディフェンスも、サイドでは1対1の強さが求められる。そこの勝負でほとんど負けなかったのが右サイドの室屋だ。特にJリーグは左のサイドハーフやウィングに強力なアタッカーが多く、そうしたキーマンとのマッチアップが多い中で室屋の働きは大きかった。もちろん中央の森重や渡辺剛の頑張りも見逃せないが、彼らがボックス付近の守備に徹しやすかったことはGK林を含めた中央の安定に繋がっている。その安定感は夏場に加入し、主に左サイドバックで起用されたオ・ジェソクの補強でさらに高まった。また攻撃面でも縦の仕掛けからのクロスに加えて、サイドハーフのインを狙っていく飛び出しなど新境地を開拓するプレーも見られた。第33節でカードをもらい、優勝への望みをかけた最終節が出場停止になったのは残念だ。

2位:ティーラトン(横浜F・マリノス)

 開幕当初は左足のキックこそ見所はあるものの、不安定さが目立っていた。しかし、徐々にスタイルにフィットすると攻撃で持ち前のセンスを発揮しながら、ディフェンスでも大きなミスがなくなり、横浜F・マリノスの躍進を大いに助けた。基本的にインサイド寄りでビルドアップに関わりながら、相手の出方に応じてアウトサイドからのオーバーラップを繰り出すなど、状況判断も素晴らしく、タイの年間最優秀選手に選ばれたことも頷ける。また遠藤渓太、マテウスと左のコンビが変わる中でも後ろから支え、うまく生かし合うなど、右サイドバックの松原健とともにマリノスの“アタッキング・フットボール”を精力的に支えた。

3位:柏好文(サンフレッチェ広島)

 3-4-2-1の左ウィングバックではあるが、攻守に渡るハードワークを評価して、この部門で選出した。もっと言えば3バック左の佐々木翔とのコンビが見事であり、どちらかが欠けても広島のパフォーマンスが下がってしまう。5月17日のサガン鳥栖戦で右ウィングバックを担ったが、それ以外は固定的に左ウィングバックで起用され、多くのチャンスを作り出し「柏といえば左45度」と自負する左ワイドから右足で狙うミドルシュートを武器に8得点を記録した。右利きだが左足のクロス精度も高く、1対1では必ずと言っていいほどクロスに持ち込める突破力も目を引いた。32歳という年齢は全く感じさせず、U-22世代を中心にした選考基準でなければ12月のEAFF E-1選手権で代表に選ばれる資質は十分にあっただろう。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行