そんな女房には、2回ほど自宅にチャンピオンベルトを持ち帰って自慢したことがある。これも一種のギフトになるのかな。全日本のUNヘビー級王座を初めて取ったときと、新日本プロレスのIWGPヘビー級王座。IWGPを取ったときは、祝勝会で飲んでいたところに当時若手だった永田や棚橋たちが来てね。彼らもベルトを巻いて、うれしそうに写真を撮り合っていたよ。「せっかくだから、写真撮っちゃえよ!」って、俺が焚きつけたからだけど(笑)。でも、彼らにも、「ベルトを巻かせてもらったからには、頑張らなきゃ」という責任感が芽生えただろうし、そういう気持ちにさせるのも、先輩の大切な務めじゃないかな。

 娘に最初に贈ったものは何かって? 彼女が生まれて間もないころかな、巡業先のドライブインに立ち寄って、ジャンボや子どもがいるレスラー同士でおもちゃのコーナーに寄ったんだよ。ジャンボは息子用のミニカーを探していて。そのとき俺が無意識に手に取ったのが、ジープのミニカー(笑)。女房に、「うちは娘だよ」って笑われたな。今も娘の家に飾ってくれているよ。

 こうして振り返ると、ギフトって大事だよね。クリスマスでいえば、身近に幸せを共有できる相手がいるなら、絶対に一緒に過ごしたほうがいい。大切な思い出として残るからね。アメリカ時代の俺のように、一人で過ごして敗北者のような気持ちを引きずらないようにしてほしいね。

 嶋田家の話でいうと、俺がサンタに扮することもないし、クリスマスを大々的に祝う習慣はなかったな。でも、これには理由があってさ。実は、翌日が女房の誕生日なんだよ(笑)。そこがメインイベントなんだから。前日の残りのケーキを出すことがないように、娘も事前に駆け回って準備に大忙しだ。もうすぐで女房の誕生日を一緒に祝える。待ち遠しいね。まあ、一般的なことをいえば、クリスマスは奥さんや子どものためのもの。自分のことはさておき、家族が楽しめるように努力をするのが父の役目だよ。家族の喜ぶ顔を見れば父親の心も弾む。それが一家円満の秘訣じゃない。

 もう少し付け足すと、娘の誕生日は七夕の翌日で、俺の誕生日は節分の前日なんだけど(笑)。いろいろとややこしい家族だな。ちょっとズレてて面白い? いやいや、そこは奥ゆかしい一家ということにしておいてくれよ(笑)。

(構成/小山 暁)

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天龍源一郎

天龍源一郎

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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