働き盛りの若い世代が、家族の病状を聞くために仕事を休むことは大変なことでしょう。ウェブ会議が慣れている世代であれば、医師と患者さん家族ともにウェブでのインフォームドコンセントは行ってもいいのではないでしょうか。

 もちろん、お互いに顔を合わせて話したほうがよい場面もあります。ある程度のルール作りは必要になると思います。患者さんも医師も無理をしないように、私たちを含め、若い世代が積極的に代えていく必要があるでしょう。

【3】医師の当番制を認める

 私が研修医の頃は、一年じゅう休みなく病院に来ました。土日も祝日も関係なく、入院中の担当患者さんを診に一度は病院に顔を出しました。

 毎日患者さんを診察すれば、小さな変化に気がつくこともでき、不測の事態への対応が可能になります。また、患者さん側も担当医師に毎日見てもらえれば安心感もあります。

 一方で、この主治医制度が負担となっている医師がいることも確かです。子育て中の場合、小さなお子さんを週末誰かに預ける手はずを整えるのは大変です。

 この当番制は、私たちの職場を含めすでに行っている診療科も多くあります。そして、できていない病院もあります。

 事情は病院それぞれですが、当番制に反対する人もいます。意外かもしれませんが、当番制に反対するのは患者さんではなく、医師です。とくに、主治医制で苦労した経験のある年配の医師が反対する場合が多いと感じます。

 自分が我慢したから後輩にも我慢させるのではなく、若いお医者さんには、よりよい職場環境へと変えていくのが先輩の役目ではないでしょうか。

◆まとめ

 比較的女性医師が働きやすいと言われている皮膚科でも、まだまだ改善の余地があるのが病院の職場環境です。長時間手術のある外科では、上記に記載した提言だけでは対応できない問題も抱えています。

 女性医師が働きづらい職場環境というのは変えるべきです。医師も人間らしい生活ができるように、すこしずつ患者さん側の理解が増えることを期待しています。

 そして、一番の問題は、働きやすくする工夫を医師自身が反対しないことです。

「俺のときはこうだったからお前らも頑張れ」という不条理な押し付けは、業界全体の低迷を招きます。

 私を含め、病院の労働環境を変えることができる立場の人間が、積極的に働きやすい職場に変えていく必要があると思っています。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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