中日・石橋康太 (c)朝日新聞社
中日・石橋康太 (c)朝日新聞社

 優勝チームに名捕手あり。

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 かつて自身も名捕手、そして名監督として活躍した野村克也氏の名言である。今年は長年攻守にチームを支えた阿部慎之助(巨人)が引退し、その一方で森友哉(西武)がMVPと首位打者を獲得するなど球界の捕手勢力図に大きな変化が見られた年でもあった。そして近年、正捕手を固定できていない、または固定しないチームが増えていることも事実である。そこで今回は、来シーズン正捕手争いが激化しそうなチームをピックアップしてみたいと思う。

 セ・リーグで今年捕手の起用が大きく変わる可能性が高いのが中日ヤクルトだ。中日は今年強肩が持ち味の加藤匠馬を最も多く起用したが、不安定な捕球と打撃面の弱さからレギュラー獲得にはいたらなかった。そしてシーズン途中には松井雅人をトレードでオリックスに放出し、高校卒ルーキーの石橋康太をスタメン起用するなど世代交代に向けての動きが進んでいる。

 そんな中でレギュラー争いに加わりそうなのが今年のドラフトで獲得した郡司裕也だ。慶応大では1年秋から正捕手を務め、リーグ戦通算94安打、11本塁打を誇る。地肩の強さはプロに入ると平凡だが、配球もよく考えており、高校、大学と全国の大舞台で活躍してきた経験も大きい。11月に行われた明治神宮大会でも攻守に大活躍を見せてチームを日本一に導いた。もしドラフトが明治神宮大会の後だったら、2位以内で指名されていた可能性が高い。郡司と石橋が正捕手を争うようになれば、将来の見通しもぐっと明るくなるだろう。

 一方のヤクルトは中村悠平が長く正捕手を務めていたが、このオフに経験豊富なベテランの嶋基宏を獲得したことで捕手事情は大きく変わった。中村は毎年3割前後の盗塁阻止率をマークしており、スローイングには衰えが見られないが、時折見せる軽率な守備と投手陣の崩壊にも責任があると見られてか、シーズン後半はスタメン出場が減っていた。嶋は攻守ともに衰えは見られるが、リーグも変わる新天地でもう一花咲かせる可能性は低くない。この二人にスローイングでは球界屈指の松本直樹と若手の有望株である古賀優大も正捕手争いに絡んでくる力がある。チームと投手陣の立て直しを図るために、捕手を交代させるということは珍しくなく、高津臣吾新監督の決断に注目が集まる。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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巨人も正捕手争いが激化?