■消えたひょっこりはん

 そういう意味では、ひょっこりはんの消え方もなかなか美しい。10月には結婚して、

「先日、ひょっこりちゃんと結婚することができました! わーい! これからも温かく見守って頂けたら嬉しいです! ナイスひょっこりー!!」

 と、ツイッターで報告したが、知らなかった人もいるのでは。このひっそりとした淋しい状況がなんとも愛らしいではないか。同じことは、父娘コンビの完熟フレッシュについてもいえる。最近は娘の高校受験にかこつけて「スッキリ」での密着企画が進行中。この私生活切り売りのわびしい生き残り策が、せつなくてたまらない。

 来年とか再来年、夢屋まさるがひょっこりはんみたいな妙味を見せてくれるとは考えにくい。天国まで行けずに失墜してしまったからだ。

 笑いには流行と一体化する機能があり、もちろん長年トップで活躍する芸人も流行を発信することはできる。が、その一体感をより鮮明に示すのはやはり一発屋だ。トップ芸人の新陳代謝がなかなか進まないなか、一発屋も目立てなかった今年は、笑いという文化があまり豊かではなかったといえるかもしれない。

 来年はせめて、新語・流行語大賞を芸人たちが争うくらいになってほしいし、本格的な一発屋にも出現してもらいたいものである。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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