大阪維新の会が結党した当初から取材を続けている大阪府庁キャップの池尻和生記者(現・政治部記者)も同じ現場を見ていて、意見が一致した。

「かつての維新と雰囲気が似ている。今回の維新は伸びるかもしれない」

 2012年に当時の橋下市長が国政政党「日本維新の会」を立ち上げたとき、私は橋下氏の取材を担当していた。その年の12月に行われた衆院選では、北海道から沖縄まで、全国を街頭演説して行脚する橋下氏の後を追い、ほぼすべてを現場で取材した。

 政治家・橋下氏にとって「全国デビュー」となったこの選挙。橋下氏が行く先々で街頭演説を始めると、最初は聴衆が少なくても、しゃべればしゃべるほどその数は大きく膨れあがっていった。

 橋下氏は選挙カーの上でマイクを握るとき、最前列に詰めかけた聴衆よりも、後ろを歩く人の流れに注目していたという。なぜか。

 選挙カーの目の前、最前列に陣取る「ファン」たちは、いつどんなときでも熱心に応援するものだ。大事なのは、たまたま通りかかった人たちの足を止められるかどうか。

 今の日本で支持政党を聞けば、自民党と並んで多いのは「支持政党なし」だ。選挙では無党派層を取り込めるかどうかが勝敗の鍵を握る。橋下氏自身、市長時代にこう話していた。「今の日本の国民は、どこかの団体に帰属する意識が薄れている。どこの団体にも所属していない、既得権のない人。そういう層が一番多いと思いますよ」

「僕の票の基盤はふわっとした民意」とも公言していた橋下氏。業界団体や労働組合といった確固たる支持層を中核に抱える「既成政党」との違いがそこにあった。

 ただ、橋下氏の政界引退後、街頭の空気は変わった。

 維新の公認候補が敗れた2017年9月の堺市長選。日本維新の会が公示前の14議席から11議席へと勢力を減らした同年10月の衆院選。維新候補の街頭演説を見に行くと、「維新カラー」の緑色のTシャツを着た支持者たちの熱量は、かつてよりも増したと感じることもある。だが、かつてに比べると、足を止める通行人がきわめて少ない。

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誰も予想していなかった維新の大勝…