■「うつ」という言葉で表現することで、自分の精神と向き合えた

 私は中学生の頃からうつ病で、ずっと頭の中がモヤモヤしていました。なんとなく悲しくて、ぼんやりと虚しくて、急に理由もなく強い不安がでてくる、というような状態です。中学3年生のとき、はじめてそれが「うつ」という言葉で表される病気の症状であると知り、やっと自分の精神に向き合うことができたのです。

 そこから、うつを治すためにはどうするか、なぜうつになるのか?と、現状から一歩進んで、対策や理由を考えられるようになったのです。明治や大正時代に多くの文豪や芸術家が「漠然とした不安」を訴えていましたが、現代でいう「うつ」のように、その状態を定義できる言葉が存在しませんでした。そのため、誰もそんな気持ちを晴らす解決策を考えることができず、自死を選ぶ人もいました。

 心理学的にも、感情を表現する言葉をたくさん知っていると、精神的に落ち着いて、気分が安定しやすいということはいわれています。自分の中の、モヤモヤしている気持ちにピッタリの表現があれば、その感情によりしっかりと向き合えるからです。頭にぼんやりと浮かんでいるイメージは、言葉により名前がつくことで、やっと認識でき、はじめて考えることができるのだと思います。

 あるママ友の子どもは、幼稚園で仲間外れにされた経験があったそうです。しかし子どもの年齢が低く、まだ「いじめ」などという言葉を知らなかったため、自分がおかれている状態をうまく理解できず、親に伝えることができませんでした。

 ママ友が息子の異変に気づき、幼稚園での出来事を把握したことで、やっと園側に働きかけて解決できたとのこと。このように好ましくない環境におかれたときも、子どもが言葉をたくさん知っていて、考えたり伝えたりする能力が身についていれば、早めに対応しやすくなるというメリットもあります。

 そのため私は、来年から小学生になる息子に対し、普段から積極的に語彙を増やせるような機会をつくるように努めています。

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「ヤバい」を使ったら罰ゲーム