三つ目は「こたつの中で寝ない」ということです。こたつの中は、人間の体温よりも高い温度になっています。そのため、こたつの中に入っている体の部分はどんどん暑くなってしまいます。

 私たちの体は、汗をかくことによって体温を下げようとしますが、引き続き、こたつの中で身体は温められつづけてしまうため、さらに汗をかくことによって、体温をさげようとします。

 すると、のどや鼻などの呼吸器系は水分が不足した状態となってしまい、免疫が働きにくくなってしまいます。けれども、寝てしまっていては水分が不足しているという体の変化に気づきません。結果的に、免疫が働きにくくなった状態で、乾燥した口腔・鼻粘膜からウイルスが侵入することによって、風邪を引き起こしやすくなるのです。

 余談ですが、脱水状態になると血液が濃縮され、血栓ができやすくもなります。血栓によって血管が詰まると、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気を発症することにも繋がってしまいます。また、こたつの中は狭く、十分な寝返りを打つことができません。そのため、同じ姿勢を長く続けることが腰や肩などの筋肉や関節の負担となり、腰痛や肩こりをも引き起こしてしまうことにも繋がります。

 なお、電気毛布や電気カーペットの使用にも注意が必要です。体全体が温まるため、寝ている時に使用すると体温調節ができなくなり、こたつと同様に脱水を招く恐れがあるだけでなく、低温やけどを起こす危険性もあるからです。

 最後に、受験シーズンの対策で忘れてはいけないのが、インフルエンザです。FDA(アメリカ食品医薬品局)のゴットリーブ長官は、「FDAが承認したインフルエンザを治療する抗インフルエンザ薬はいくつかあるが、予防接種の代わりになるものはない」と述べています。

 もちろん、インフルエンザの予防接種をしたとしても、予防の必要性に変わりはありません。受験生であってもそうでなくても、日々の対策・予防が大切です。風邪に気をつけて、良き年末年始を迎えてくださいね。

○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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