日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「受験シーズンを控えた風邪対策」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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そろそろ受験のシーズンですね。大手学習塾に通う小学生の子どもたちの中学受験前1カ月の過ごし方を読んでいたら、「試験までの1カ月は全く外出しませんでした」との意見が多数ありました。
追い込みの時期や試験当日に、風邪はもちろん、インフルエンザにかかってしまったら大変ですものね。私ごとですが、中学受験を間近に控えた小学6年生の12月初め、インフルエンザにかかってしまいました。高熱と関節痛にうなされ、5日間ほど寝込む羽目に。焦る気持ちはありましたが、身体は悲鳴をあげていたのかもしれないと考え、過去問を封印して休むことに専念したのでした。
母親の方針もあり、インフルエンザが治った後は、受験前日まで小学校に通いました。私にとっては、家の外に出ることが気分転換になっていました。一方で、塾の友人の中には、12月から小学校を休んで自宅でずっと勉強している子もいましたし、大学受験の時や医師国家試験前は、一日中部屋にこもって勉強していた記憶しかありません。
とはいえ、外出しないからといっても風邪予防は大切です。受験生だけでなく、それを支える周りの人たちも気になる風邪対策について、風邪にまつわる論文や私の経験談を交えながら、お話したいと思います。
俗に言う「風邪」とは、かぜ症候群と定義されています。咳やのどの痛み、鼻水や鼻づまり、発熱、だるさ、頭痛や筋肉痛などを引き起こします。風邪の原因の80~90%はウイルス性です。RSウイルスやパラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなどが主な原因となって風邪を引き起こします。
風邪はあらゆる年齢層に発症します。米国のミシガン大学のMonto医師は、就学前の子供は年に5~7回、成人は年に2~3回の頻度で風邪を発症する、と報告しているのです。