ラジオ番組出演時、個人的な今後の目標を聞かれたのにもかかわらず、「FC東京が優勝すること」と答え、爆笑を誘った。

「それではプロのシンガーじゃないだろう、と言う人もいます。でも絶対に、FC東京優先でスケジュールも組む。ライブもFC東京の試合がない時にする。そこだけは自分の中で突き通そうと思っています」

 本業はプロシンガーである。多くがなりたくてもなれない、夢のような職業で着実に前進しているが、それでもFC東京に対するスタンスはブレない。シンガーである前にイチFC東京ファンなのだ。

「シンガーなら『武道館でライブやりたい』とか、『チャートで1位になりたい』といった目標や夢があるのが普通。でも、今の私は『FC東京に優勝して欲しい』しかない。シンガーとして活動している根幹にはFC東京がある。選手が最後までボールを追う姿勢などが感性を刺激してくれます。一生懸命って簡単には言えるけど、それがFC東京の選手からは伝わってくる。それくらい私には影響力がありますね」

 FC東京は惜しくもリーグ優勝を逃したものの、来年のACL(アジア・チャンピオンズリーグ)出場権は獲得した。勝ち進めばアジア制覇、そしてその先にクラブ・ワールドカップ出場と世界一の可能性がある。

「アジアですよ、アジア! もう来年のことを考えて貯金してます。リーグとアジアの両立は大変だと思いますが、FC東京ならやってくれる。横浜での悔しさを忘れずに応援し続けます」

 純粋無垢、猪突猛進なシンガーは、FC東京とともに戦い、歌い続ける。

「ソロになってからは苦しいことも、悲しいこともたくさん経験している。そんな時に、どんな時も戦っている人だったり、支えてくれる人がいることがわかるようになりました。『私は1人じゃないんだ』と気付いた。これもすべては、FC東京があったからこそ巡り合わせてくれたことだし、気付けたこと」

『You’ll Never Walk Alone』である。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。