「最初はFC東京ファン・サポーターを題材にした舞台出演が決まり、そのための曲として作ったんです。でも、いろいろ事情が重なり、その曲はお蔵入り。そんな陽の目を見なかったはずの曲がスタジアムで応援歌として歌われだし、独り歩きして有名になっていったんです」

 応援だけでなく、ラジオではその音源がヘビーローテーションされるようになった。「信じられない」と誰よりも感じていたのは彼女自身だ。

 FC東京の好きなところとして、「選手、チームとファン・サポーター間の絶妙な距離感」を挙げる。以前は自分自身もアイドル活動を通してファンと接してきた。常に笑顔で接するのが仕事の1つだっただけに、練習場などで選手のふるまいを気にしてしまうこともあるという。

「アイドルは常にアイドルでいることが求められる。無理をしなくてはいけない時もあります。でも、FC東京の選手はいつも自然にふるまっています。プロ選手として少しカッコつけてファンと接していたと思ったら、すぐ後に仲の良いファンとはふざけたりする。人間味が伝わってくるからこそ、もっと応援、サポートしたいと感じる」

 残念ながら、優勝の歓喜を味わうのは来年以降に持ち越しとなった。FC東京はチーム創設以来、3度カップ戦の優勝経験はあったが(04、09年ナビスコ杯、12年天皇杯)、J1リーグ優勝経験はなし。21年目の悲願はすぐそこだったが、最終節で横浜Fマリノスに完敗し、目の前で優勝を決められてしまった。

「悔しかった。でも私より長く応援している人はもっと悔しかったんだろうなって。ただツイッターの書き込みなどを読むと、みんな切り替えていました。そういうところがFC東京ファンの魅力でもあります」

 まるでローラーコースターに乗っているかのようなシーズンだった。開幕から順調に首位を走った。ラグビーワールドカップのためホーム・味の素スタジアムを使えず、アウェー8連戦を強いられることもあった。微妙なジャッジに唇を噛んだこともあった。最後に悔しさを味わった。それでも最後の最後まで楽しめた、極上のシーズンだった。

「ファン1年目からこんなに濃密な経験をさせてもらった。今後、FC東京が優勝しても、今年は絶対に忘れられない年になりましたね。だからこそ、今年好きになったのは運命だったと感じます」

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プロシンガーなのに、夢は「FC東京に優勝して欲しい」しかない