いるはずのない右翼手が二塁ベース上からのバックホームで三塁走者を本塁タッチアウトに仕留める“神プレー"が見られたのが、93年4月24日の巨人vs阪神甲子園)だ。

 1対1の7回、巨人は2死から緒方耕一の右前安打と川相昌弘の四球で一、二塁と一打勝ち越しのチャンス。次打者・吉村禎章は期待に応え、右前に痛烈な当たりを放つ。二塁走者・緒方は、90年、この年と2度にわたって盗塁王に輝いた俊足。簑田浩二三塁コーチャーは当然のようにグルグルと手を回した。ところが、当たりが良過ぎたことと、ライト・亀山努が素早く一塁に返球したため、慌てて三塁を回った緒方を制止した。

 だが、緒方が本塁を突くと信じて疑わなかった一塁走者・川相は、二塁を大きくオーバーランしていた……。

 ファースト・パチョレックは、すぐさま二塁ベースカバーに入ったショート・久慈照嘉に送球。久慈はサード・山脇光治に転送した。二遊間に挟まれる形になった川相が必死に二塁に戻ろうとした直後、なんと山脇が悪送球を犯し、フワリとした送球ががら空き状態の二塁へ。

 ところが、ボールがまさに外野に抜けようとしたそのとき、ライトから忍者よろしく駆けつけてきた亀山が間一髪捕球に成功。そして悪送球の隙をついて三塁走者・緒方がスタートを切ったのを見ると、亀山は二塁ベース上から矢のようなバックホームをして、タッチアウトに仕留めたのだ。

 右翼手が二塁からバックホームするという野球の神様も思わずビックリの奇跡。亀山本人も「何万回に1回のプレーでしょうね」と自らのGJに驚きを隠せなかった。ピンチを逃れた阪神はその裏、八木裕の中前タイムリーで勝ち越し。さらに2対2の9回にもパチョレックが中前にサヨナラ打を放ち、3対2と勝利した。

 試合後、亀山は「僕はもともと内野手(三塁手)で入った選手。久々に内野手の気分になりましたよ」と最高の笑顔を見せていた。

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守備の人が“ミスター赤ヘル”と比肩する記録