2018年1月、31歳で教授になった研究者が話題になった。横浜市立大先端医科学研究センターに所属する武部貴則氏である。彼は2013年、26歳で准教授となっている。

 武部氏は、iPS細胞から血管構造を持つヒト肝臓原基(肝芽)を作り出すことに世界で初めて成功した。また、肝芽の最適な培養・移植方法を見いだして、ミニ肝臓の大量製造も手がけている。横浜市立大はこうした実績を高く評価し、教授に抜擢した。大学はこう説明している。

「当該教員はこれまで数々の優れた研究成果を上げ、国内外からも高く評価されるなど、本学のプレゼンス向上に大きく貢献してきました。こうした実績を評価するとともに、そのアクティビティを後押しするため、本学の附置研究所である先端医科学研究センターの教授に任命したものです。今後、本学の『強み』である再生医学はもちろんのこと、より幅広い分野での研究の展開が期待されます」(記者発表資料から、2018年1月22日)

 日本における最年少准教授の年齢は26歳、というところだろうか。大学入学までに飛び級がない現在の教育制度(千葉大などごく少数を除く)では、どれほどの天才であったとしても、20代前半で准教授になることはできない。

 なお、かつて東京大法学部には卒業後に助手に採用し、そのまま助教授(現在の准教授)、教授になるルートがあった。このなかには、20代のうちに助教授となり、30代で教授に就任した俊才がいる。メディアでよく知られた学者たちは次のとおり(敬称略)。

 元東京大総長・佐々木毅(1942年生まれ)、東京大名誉教授・御厨貴(1951年生まれ)、早稲田大教授・長谷部恭男(1956年生まれ)、 法政大教授・山口二郎(1958年生まれ)、同・杉田敦(1959年生まれ)、東京大教授・牧原出(1967年生まれ)、首都大学東京教授・木村草太(1980年生まれ)。

 先の大澤氏はどのように「最年少特任准教授」になったのだろうか。彼のインタビュー記事をまとめると、高等専門学校(高専=5年制)を卒業してから、筑波大3年に編入学している。そして、東京大の大学院に進み、博士号を取得した。その後、彼の実績は情報学環・学際情報学府で評価され、特任准教授に採用されたようだ。

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待望される次世代の若き才能