女房は、「あなたが運転するときは、助手席で心のブレーキを踏んでいる」って言うけれど、昔から運転中に左右を見るのは、女房や娘の役目。俺が、「横から(他の車が)来てる?」「進んでもいい?」ってすぐ聞いちゃうから。「自分で見てよ」って言われるけれど、「レスラーは首を故障してるんだし、左右が見づらいんだよ」ってごまかしてさ。

 まあ、旅行の機会も増やしたいし、田舎の方やちょっと不便なところに行くと、やっぱり免許がないと大変だからね。あまり高齢になって運転しても周囲に迷惑をかけるのは承知しているけれど、やっぱりないと不便。みんなが免許返納を悩む気持ちがよく分かるよ。もしも俺が免許返納してたら、今回の連載がもっと話題になったのに(笑)。運転しなくなれば道も覚えなくなるだろうし、物覚えも悪くなるかもしれないし。う~ん、困ったな。

 市街地を運転する機会は確かに減ったけれど、やっぱり免許はロングドライブ用にとってこうかな。日本も高速料金をフリーにすればいいのにね。年金は減るのに消費税は上がるし、中途半端だよ! 妙なアンバランスさを、高齢者の俺たちが試されているみたいで腹が立つな。昔は高速道路を走るときは、「嶋田家専用だ!」って飛ばして……おっと、そのうち警察から表彰される予定だし、これ以上はやめとこう(笑)。

(構成/小山 暁)

著者プロフィールを見る
天龍源一郎

天龍源一郎

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

天龍源一郎の記事一覧はこちら