芸術性の高いプログラムでファンを魅了するメドベデワ(C)朝日新聞社
芸術性の高いプログラムでファンを魅了するメドベデワ(C)朝日新聞社
宮原知子も素晴らしい演技力を誇る一人(C)朝日新聞社
宮原知子も素晴らしい演技力を誇る一人(C)朝日新聞社

 4回転時代到来といわれる今季女子シングルだが、芸術性の高いプログラムで魅了するスケーターもまた、静かな輝きを放っている。彼女たちは、フィギュアスケートにはジャンプ以外にも見どころがたくさんあることを教えてくれる。

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 定評のある表現力にますます磨きをかけているのが、エフゲニア・メドベデワだ。今季のフリースケーティング(ジェフリー・バトル、シェイ=リーン・ボーン振付)に数年間温めていたという映画『SAYURI』の曲を使っている。満を持して採用した和の曲に合わせ、着物風の衣装をまとって滑るメドベデワは、一つの道を究めようとする女性を演じる。国や文化の違いを超えて音楽の本質的な部分を感じ取り、それを卓越したスケーティングで表現するメドベデワは、この『SAYURI』で拠点を母国ロシアからカナダに移した勇気ある挑戦の成果を示している。

 日本のテレビ局の取材を受けたメドベデワは、表現者として大切なのは「いつも豊かな心でいることです」と話していた。

「人生で多くの感情を経験するほど、氷の上でイメージをより良く伝えられると思います」

 芸者の生涯を演じるメドベデワのフリーに深みがあるのは、彼女がたくさんの感情を経験してきたからだろう。人生の蓄積があってこそ、表現できることもあるのだ。

『SAYURI』は平昌五輪のショートプログラムで宮原知子が滑り、日本女性の美しさを表現して深い印象を残した曲でもある。そして、宮原が平昌五輪フリーで滑った『蝶々夫人』と、今季のプログラムの選曲は、ピアニストであるジョン・ベイレス氏と宮原の交流から生まれたストーリーでつながっている。

 宮原は、今季フリー(ローリー・ニコル振付)の曲に「シンドラーのリスト」とラフマニノフ「鐘」が入り混じるピアノ曲を使っているが、これはジョン氏の編曲によるものだ。宮原の平昌五輪フリー『蝶々夫人』をテレビで観て、自身の編曲した音楽がスケートによって美しく表現されていることに感動したジョン氏が宮原に連絡をとったことから二人の交流が始まり、宮原はジョン氏のリサイタルに招かれる。その際に聴いて滑りたいと感じたのが、今季のフリーに使っている曲なのだという。

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2人の今後の戦いに注目