赤ちゃんのぐずる声、幼児たちのはしゃぐ声、それらがBGMとなり、会場の空気を和やかにしてくれた。
そして遺影感が滲んでしまっている夫の写真について触れると爆笑が起きた。
やはりみんなそう感じていたということである。
その頃、舞台上で刀片手に真剣に芝居しているであろう夫。
たまプラーザでこんな風にいじられているとは夢にも思わないだろう。
かくして私とKさんは、1時間半しゃべりまくった。
これから孫の出産を控えているという方や、抱っこ紐に赤ちゃんを抱いている方、まだ結婚の予定すらないという方、高齢のご夫婦、小さいお子さんを二人連れて家族で来てくれた方、幅広い年代の方が来場下さった。
生後数カ月の赤ちゃんからご高齢の方までだから幅広い。めちゃくちゃ幅広い。
これ以上の幅広さがあろうか。
執筆していた頃は、自分と同じように、赤ちゃんを抱えて奮闘中のママたちに向けてピンポイントで書いている感覚があったが、こうして本を手にとって下さった方々を前にして、確かに誰しも母のお腹で育って産まれて来るのであるから、出産や子育ての経験談というのは全くの他人事ではないのかもしれない、と改めて思った。
男性の方も多くいらして下さっていた。
そのイベントで私のヘアメイクを担当してくれたOさん(二児の父)には、「子供が小さい時に読みたかったな」と言われ、なぜかと聞くと、自分は忙しくてあまり子育てを手伝わなかったが、妻は大変さを一切口にして言わない人だったので、こんなに不安を抱えていたり孤独な思いや大変な思いがあったなんて想像すらしなかった、と。
わかっていたら、もうちょっと助けることができたかもしれないのに、と。
そう言われて思ったのは、育児は想像以上に男性には分からないものなのだ、とこちらも想像して、伝えるテクニックを駆使しなくては、ということだ。
パパたちは、赤ちゃんに対して自分が分からないことでも、ママなら本能的に分かるのだろう、と想像するらしいのだ。