それが中国の方法論でもある。

 なんとか中国は鉄道でも優位に立ちたいシナリオをつくろうとしている気もする。

 タイとカンボジアの国境はこれまでも揺れてきた。ポルポト時代、そしてベトナムの侵攻……。難民が生まれ、国境地帯はいつも緊張していた。しかしそんな混乱も終わって20年以上。平穏な国境に戻ったのだが、鉄道をめぐって新たな不協和音が響きはじめてしまった。

 旅行者の間では、プノンペンから列車でタイに入り、さらに南下してマレーシア、シンガポール……。そんな列車旅が期待されていた。しかしここにきて停滞。

 この国境は、いつも世界情勢に翻弄される。そんな宿命を背負っているような気になってくる。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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