■「増産態勢」照明を1日12時間以上あてれば、年3回

朝日新聞の調査では14年度以降、の流通量は前年度比平均1割増のペースで増え続けており、14年度と17年度を比べると、猫の年間流通量は3年で3割以上も増えていることがわかる。

 18年に入ると、ペットショップにおける販売頭数の増加はさらに過熱。「猫は仕入れるとすぐに売れるため、地方都市まで回ってこない」(大手ペットショップチェーン従業員)という状況になり、この年のゴールデンウィーク前後には、猫の仕入れ値はさらに急騰したという。競り市では、子犬の落札価格を上回る子猫は珍しくなくなっている。

 このように人気が過熱し、価格が高騰し、流通量が増えるということは、当然ながら生産量が増えることを意味する。猫ブームの裏側で10年代半ば以降、猫は完全に「増産態勢」に入っている。

「猫の販売シェアが年々増加しています。昨年は約18%でしたが、今年のゴールデンウィークには20%を超えました。猫のブリーダーの皆さまにはたいへんお世話になっております。本日は、猫の効率の良い繁殖をテーマに話をさせていただきます。犬の繁殖とは大きく異なりますので、よくお聞きください」

 16年初夏、ある大手ペットショップチェーンが都内で開催した繁殖業者向けのシンポジウムを取材した。講師を務めた同社所属の獣医師は、繁殖業者らにそう語りかけた。

 獣医師は様々なデータを用いながら、猫は日照時間が長くなると雌に発情期がくる「季節繁殖動物」であることなどを説明。そのうえで、繁殖用の雌猫に1日12時間以上照明をあてつづけることを推奨した。

「普通の蛍光灯で大丈夫です。長時間にわたって猫に光があたるよう飼育していただきたい。光のコントロールが非常に大切です。ぜひ、照明を1日12時間以上としていただきたいと思います。そうすれば1年を通じて繁殖するようになります。年に3回は出産させられます」

 実は猫は「増産」が容易な動物なのだ。

 一方こうした状況に対し、猫の販売量が増えることそのものに危機感を抱く向きは多い。前出の宮田玲子「猫びより」編集長は言う。

「本当に猫が好きな人ほど、今の猫ブームについて疑問を持ち始めている」