■「犬ブーム」の悲劇を追い始めた猫

 は、平成の半ばに入って存在感を増し始めた。一般社団法人「ペットフード協会」の推計によると、2000年には約770万匹だった飼育数はじわじわと増え続け、17年に約952万匹となってついに犬(約892万匹)を逆転した。

 背景には、00年代半ばから始まった猫ブームがある。

 辰巳出版が隔月で発行する猫専門誌「猫びより」の宮田玲子編集長は、「00年代半ば以降、個人ブログ出身の人気猫などが登場し、猫の性格や動作が多くの人の共感を呼ぶようになった。SNS上などでは、犬よりも猫のほうが、より幅広い層からの共感を集めている」と分析している。

 ツイッターや動画投稿サイトなどが主流になっても、猫人気は継続。そこから発展して写真集、映画、CMに猫が次々と取り上げられた。「ネコノミクス」という造語も登場し、その経済効果は2兆3千億円(15年)という試算まで出ている。

 ブームの恩恵を受けて、ペットショップも活況を呈した。週末の東京都内のペットショップに足を運んでみると、子猫の前には人だかりができていた。子犬より高めの20万円台半ばから30万円台の子猫が目立つ。その猫種を見てみると、スコティッシュフォールドやアメリカンショートヘア……。

 残念ながらこれは、いつかきた道だ。

 振り返ってみれば、シベリアンハスキーやチワワがブームになった後、大量の捨て犬が社会問題になった。その背後には、繁殖に使われたたくさんの親犬たちの犠牲も存在する。

 犬ビジネスは平成に入って急速に成長した。そして、犬でできあがった、

工場化した繁殖業者(ブリーダー)による大量生産
 ↓
競り市(ペットオークション)による量と品ぞろえを満たした安定的な供給
 ↓
流通・小売業者(ペットショップ)による大量販売

 というビジネスモデルに、いきなり猫たちが乗せられてしまったのだ。

 ついこの間まで拾ったり、もらったりするのが当たり前だった猫たちだったが、テレビCMなどがはやらせたスコティッシュフォールドなど一部の純血種の人気が高まり、ペットショップで購入するものになり始めている。

 16年のゴールデンウィークには、競り市での落札価格が例年の3~4倍まで高騰し、子犬より高値がつく子猫も出て、業界内で話題になった。

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