彼女は低用量ピルの処方を希望して受診したのですが、その約1カ月後にクリニックを受診されました。低用量ピルを希望されると思っていたら、処方希望はなんと緊急避妊薬。低用量ピルを処方したにもかかわらず、どうしてなのかしらと思い聞いてみると、「低用量ピルを内服しようと思ったが、母親や友人に身体によくないからやめたほうがいい」と、内服を止められたから低用量ピルを飲んでいなかった、と言ったのでした。

 診療するうえで、そして女性として生きるうえで、低用量ピルへの偏見や、低用量ピルや緊急避妊薬の認知度の低さはまだまだあると言わざるを得ないと日々感じます。性や妊娠・出産に関わるすべてにおいて、身体的、精神的、そして社会的に本人の意思が尊重され、自分らしく生きるために必要な情報を得ることができ、自分にあった選択肢にアクセス可能である日本になることを切に願います。

○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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