また、仕事内容の面でも男性側の理解が必要だ。女性芸人は、一般の女性が経験しないようなことを仕事として求められることがある。体を張ってロケに挑んで泥まみれになったり、容姿についてイジられたり、プライベートの秘密を暴露されたり、といったことがある。人を楽しませるという目的のために、時にはそういうことを引き受けなくてはいけない場面がある。この点に関しても、テレビマンが夫なら話が早い。

 また、芸人とテレビマンは、出演者と制作者という立場でそれぞれが「面白い番組を作る」という同じ目的を共有している。だから、面白さに対する人一倍のこだわりがあり、その点で気持ちが通じ合っている。これも重要な要素だ。

 女性芸人が恋人探しに関してしばしば不満を漏らすのが「世の中には面白い男がなかなかいない」ということだ。彼女たちは自分自身が芸人である上に、普段から笑いのプロである男性芸人に囲まれているため、合コンなどで一般人の男性と話すと、笑いのセンスが合わずに物足りないと感じてしまうことが多いらしい。その点、テレビマンなら面白い人もいるし、面白さに対する感覚にズレが少ない。

 さらに言えば、女性芸人とテレビマンの結婚は、それ自体がネタになるという利点もある。最も有名なのは大島・鈴木夫妻のケースだ。鈴木が自らの夫婦生活について書いたエッセイ本『ブスの瞳に恋してる』は大きな話題になり、のちに漫画化、ドラマ化もされた。結婚相手が一般人の場合、プライベートを明かすのを好まない場合もあるため、女性芸人がそれについて詳しく話せないこともある。一方、相手がテレビマンなら、テレビの中でも気軽に話題にしやすいし、夫の側がそれに反対することも少ない。イモトもまさにこのケースに当てはまるだろう。「イッテQ」という番組全体が一丸となって2人の結婚を大きく取り上げていた。

 女性芸人とテレビマンの結婚は、それ自体がプライベートの人生の一大事であると同時に、テレビの企画としても大きなものとなりうる。イモトと石崎Dの結婚を心から祝福したい。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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