例えば、

・患者がけがをする前に出場した試合で、活躍している姿をビデオで何度も見せる。
・患者がサッカー選手なら、ベッドの上にボールを転がしておく。すると自然に蹴りたい気持ちがわいて、治療に前向きになる。
・チームメートにお願いして、しょっちゅうお見舞いに来てもらう。
・同じようなけがで同時期に手術した患者同士を、同室にする。一緒にリハビリをするうちに競争意識が芽生えて、がぜんやる気が出る。

 など、選手の心理を理解したスポーツ医ならではの配慮といえるでしょう。
 
 何もプロのアスリートだけに限らず、学生や一般の方でスポーツをしていてけがをした患者さんたちも、「卒業前のこの大会にはどうしても出たい」「ずっと目標にしてきた次の大会には参加して勝ちたい」など、競技への復帰を目指してけがを治したい方もたくさんいるでしょう。そういった場合は、身近にいるスポーツ医を探して、治療を受けにいくことをお勧めします。

 日本整形外科スポーツ医学会のホームページには、各地域のスポーツ医の名簿が掲載されています。ぜひ活用してください。

 スポーツを愛するみなさんに伝えたいこと。それは、けがをしないにこしたことはありませんが、もしけがをしても常にポジティブでいることが大切だということです。けがをしてよかったと言えるくらいに、心とからだをさらに鍛えてレベルアップを目指しましょう。スポーツ医は、そんなスポーツ選手の強い味方になる存在です。

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松本秀男

松本秀男

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

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