甲子園のスター、中村奨成は今、何に取り組んでいるのか? (c)朝日新聞社
甲子園のスター、中村奨成は今、何に取り組んでいるのか? (c)朝日新聞社

「技術うんぬんの前にプロのレベルに達してない」

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 中村奨成について、東出輝裕一軍打撃コーチの口から厳しいコメントが飛び出した。

 広陵高から17年オフ、中日との2球団競合の末に地元・広島に入団。3年夏の甲子園では3試合連続本塁打を放つなど、新記録となる1大会6本塁打、高校通算45本塁打のスラッガーに即戦力の期待もかけられた。全球団スカウトが口を揃えた『本物』の強打者。しかしながらここまでは、その片鱗を見ることができていない。東出コーチは続ける。

「打撃では下半身が使えていないなど、技術的問題もいろいろある。でも、それ以前の話。入団以来、身体が大きくなっていない。『体重が80キロを超えないと話にならない』といつも言っている。広島の練習量は他球団にヒケをとらない。最新のウエイトトレーニングもできて、サプリメントや食事もしっかり摂取できる環境がある。それなのに身体ができていないというのは、本人の意識の問題。それは技術を伸ばす以前の問題」(今年の開幕前は公称76キロ)

 身体は持って生まれた天性のものである。東出コーチは身体の大きさには恵まれなかったものの、あらゆる手段、方法を模索してプロで生き残った。身長181cmと恵まれている中村には、サイズ感だけでも大きな可能性を見出しているのだろう。

 高校時代に飛び抜けた成績を残しながらプロで結果を残せなかった強打者は多い。中村もそういう選手たちと同じカベにぶち当たっている。中村のプロ入り以来、二軍打撃コーチとして打撃を見てきて、今オフから一軍打撃コーチとなった朝山東洋は語る。

「金属バットでの打ち方が出てしまう。リストが強いため、それが他の打者より顕著だった。金属バットではしっかりミートできなくても、リストを返せば打球は飛んで行く。そのため投球を迎えに行くというか、伸び上がるようにして打ち返していた。広島入団以来、『左腰を浮かせずに沈み込んだ状態でスイングするイメージで打つ』ということを徹底している。下半身を使ってインサイドアウトのスイングで対応すること」

次のページ
やはり土台になるのは身体