――今回の本では、「孤独」が大きなテーマになっていると感じました。

 人間はみんな一人で生まれて一人で死んでいくんですよ。どんなに愛し合っている夫婦でも一緒に死ぬことはできない。一緒に心中しても自分だけ助かるかもしれないし、二人とも死んでも同時に死ぬことはできません。だから結局、人間は孤独で淋しいんです。でも、淋しいから慰め合う相手が欲しい。肌寒いから肌と肌を合わせたくなる。人間って、そうやって生きていくものじゃないかしら。

――寂聴先生はいまも一人暮らしです。やはり淋しいと思います。そんな孤独と、ご自身はうまくつき合っている、ということでしょうか。

 うまくつき合っていると思います。夕方の5時にはスタッフたちはみんな帰ってしまって、昼間の騒ぎがウソのように静まり返ります。でも、夜くらいは一人でいたいと思っているから、ちっとも淋しくない。淋しいとか肌寒いなんていう気持ちはとうの昔になくなりました。今日は46回目の得度記念日ですが、51歳で出家したことと関係があるのでしょうね。出家していなかったら、また孤独にまぎれて、同じようなことを繰り返していたと思います。

――本の中にある「あきらめずに闘う」という言葉が印象的でした。寂聴先生がよくおっしゃっている戦争と平和、命の問題です。「誰かの幸せのために」ということも繰り返し述べられています。

 私なんかが闘っても、政治の体制は変わらないでしょう。でも、闘わなかったら芸術家じゃないと思います。私は縦から見たって横から見たって小説家だから、安保法案とか、反対すべきだと思ったら、やはり動くべきなんです。ただ今年は天災が多かったでしょう。いまだに行方不明の人がたくさんいます。これだけ文明が発達しているのに、なんで防げないのかなと思う。自然の力は強大で、人間はどうしたってかなわないんです。でも、私の子どもの頃は、大雨とか大風とか年に1回でしたよ。気候変動の影響でしょうが、地球はいったいどうしちゃったんでしょうね。

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