■何を考えているのかわからない不気味さ

 さらにもうひとつ、その悪役ぶりを際立たせているのはギャップだろう。役者としての出世作「踊る大捜査線」で演じた真下正義が「愛すべきへタレ」キャラだったように、初期には悪役のイメージはなく、むしろ「いいひと」を演じることが多かった。バラエティ「『ぷっ』すま」で長く共演した草なぎ剛に負けず劣らず、そんなイメージだったのだ。

 それが金の亡者みたいな元ホストだったり、DV夫だったりをやるようになったわけだが、最近もそういう役柄ばかりではない。一昨年の主演ドラマ「悦ちゃん~昭和駄目パパ恋物語~」では、娘思いの純朴なヤモメ男の役だったし、去年今年と「ZIP!」内で放送された帯ドラマ「生田家の朝」では、平凡な夫であり父親を演じた。

 それゆえ、彼のイメージは「へタレ」「いいひと」「やばいヤツ」などを行ったり来たりしており、要するにつかみどころがない。これが悪役をやるときにも、何を考えているのかわからないという不気味さにつながり、より高い効果をあげられるようになっているのだ。

 これが同じく悪役的な怪演でも、かつての佐野史郎のようなパターンだと、そうはいかない。「冬彦さん」がブレイクキャラだったため、他の役がなかなかハマらず、苦労することとなった。

 最近「徹子の部屋」(10月17日放送)に登場したユースケは、1年前にしていた離婚や、変人めいた私生活を明らかにした。独身になったのに自宅の電気代が高すぎるとして「電気を誰かに抜かれてるんじゃないか」といぶかしむのだが、トークをするうち、その理由がわかってくることに。葉巻をたしなむので空気清浄機を6台置き、さらに除湿機を4台、そのバランスをとるために加湿器を3台使っていると話した。

「だから、なんですかね。(略)たぶん、除湿機と加湿器を一緒につけてるのが悪いと思うんですよ。どっちかにします、季節によって」

 とまあ、ますます、つかみどころのないイメージを極めつつあり、それは役者としての魔力をさらに深めていきそうだ。「ドクターX」の制作発表において、彼は「仕事選び、俺、失敗しないので。だからここにいます」として「仕事選びには自信があります」と語ったが、ドラマ側にとっても、失敗しない役者選びだったといえる。

 このドラマの後半も含め、このニュータイプの悪役俳優がこれからどんな活躍を見せていくのか。とりあえず、ユースケの出る作品には注目して損はないはずだ。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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