ミュージシャン出身でもあるユースケ・サンタマリ (C)朝日新聞社
ミュージシャン出身でもあるユースケ・サンタマリ (C)朝日新聞社

 今期の民放連ドラでトップの視聴率を誇る「ドクターX~外科医・大門未知子~」。最大の原動力は、米倉涼子扮する天才ドクターが大活躍する勧善懲悪的ストリーの痛快さだろう。が、こういう物語は「悪」がなくては成立しない。今回のシリーズでも、市村正親をはじめ、味のある敵キャラがひきたて役をになっている。

【写真】白衣もいいけどドレッシーな米倉涼子も素敵

 なかでも、注目したいのがユースケ・サンタマリアだ。AI頼みの診断が大好きな「次世代インテリジェンス手術担当外科部長」潮一摩を演じており、11月7日放送の第4話は彼がメインの回だった。

 潮の母親が認知症的な症状を示し、AIの診断のもと、潮もその方向性で治療を進めるが、大門が真の病名を見抜き、救う。それとともに、別のVIP患者の手術の際、潮が失敗しかけたのを、また大門が救うのである。にもかかわらず、潮は大門にこう言う。

「今回の件で、君は僕に貸しを作ったつもりかもしれないが、それは大きな間違いだ。僕は外科部長だ。下は上の人間のために働く。それが組織だ。そこをしっかり肝に銘じておけよ」

 もちろん、大門は「私、失敗しないので」と並ぶ決め台詞「いたしません」で返し、その場を立ち去るのだが、その後ろ姿を陰湿な目でにらみつける潮も負けてはいなかった。そう、ユースケ流悪役の持ち味はあっさりとは引き下がらない爬虫類のようにじめっとしたねちっこさなのだ。

■ブラック上司を怪演

 このやりとりを見て、半年前にドラマ「わたし、定時で帰ります。」でユースケが見せた怪演を思い出した人もいるだろう。一見柔和で、特に悪気を漂わせるでもなく、我が身可愛さに無理な仕事を請け負って部下たちに押し付けたりするブラック上司を、彼は見事に演じた。特に最終回、取引先の意向でプロジェクトを外されることになり、それを吉高由里子扮する部下に告げられたときには、

「そっか、やっぱり僕か。……って、納得できるか!」

 と、カバンを地面にたたきつけ、逆ギレしながらこんな長台詞をまくしたてたものだ。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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