私たちは無自覚のうちに、使いにくい筋肉を使わないで生活しています。使いやすい筋肉ばかり使うため、同じ部分が筋肉痛になったり、かたくなって血行が悪くなったりします。

■まずは体のクセを知ることが大事

 それが姿勢や動きのクセになって表れることを、専門用語で「トリックモーション(代償動作)」と言います。「トボトボ歩き」「ガニ股歩き」「巻き肩歩き」といった3つの歩き方は、そのわかりやすい例です。どの筋肉がサボっているかによって、歩き方に違いが出ます。たとえば内ももの内転筋が弱ると、外ももの筋肉が過剰に働き、ひざがのびなくなってトボトボ歩きます。これだけなら歩き方のクセですませられますが、徐々に「歩くスピードが遅くなる」「正座ができない」「階段が下りられなくなる」など日常生活の動作に制限がかかってきます。

 高齢者であれば、ロコモティブシンドローム(運動器障害による要介護リスクが高い状態)の始まりです。

 若い人や筋骨隆々な人にもトリックモーションは起こりますから、日頃から自分の動きのクセを知っておくことはとても大切です。

笹川大瑛(ささかわ・ひろひで)
一般社団法人日本身体運動科学研究所代表理事、教育学修士、理学療法士。病院、高校バレーボール部、スポーツ選手などのリハビリ担当を経た後、運動・トレーニング、姿勢改善のセミナーを開催。全国より医療従事者が集まるなど、支持を集める。