このような状況において、平成33 年度入試で本学志願者に対し出願要件として英語認定試験の受検を一律に課すことや成績を合否判定に用いることには無理があり、逆に受験生の公平公正な扱いを損ねる恐れがあると判断しました。

 なお、平成34 年度以降の入試については、英語認定試験に関する問題の解消と高等学校側の受入れ状況を勘案しながら検討を重ねていくこととします」(2018年12月5日)

 東北大は自ら高校に調査を行ったところ、英語民間試験利用の賛成が8%にすぎないことを重く見た。国の政策より、地元の意見を重視したわけだ。「合否判定に用いることには無理がある」「受験生の公平公正な扱いを損ねる恐れがある」という指摘は、そのまま文科省批判につながる。

 東京大は紆余曲折した。2018年3月、英語民間試験を合否判定に使わないという方針を示したが、4月に利用するという見解を示した。しかし、その後、学内から反対の声が多くあがり、9月、成績提出を必須としないという方針を決めた。

 同大学に設置された入学者選抜方法検討のワーキング・グループ(座長・石井洋二郎副学長<当時>)は英語民間試験のあり方を批判し、五神真総長(兼・入試監理委員会委員長)に以下の答申を示した。これによって、東京大は舵を切り直したわけだ。

「大学入試における出題ミスや問題漏洩などの不正を絶対に避けなくてはならないことは自明であるにもかかわらず、多くの認定試験が個々の問題を公開していない現状では、これを検証することは不可能である。また、試験の回数や会場(スピーキングにおいては試験官)の増加などの努力が、試験の質や公平性の維持を危うくする可能性も否めない。こうした点について文科省、あるいは大学入試センターが責任を持つ統一的な検証や問題解決のシステムを持たぬまま、これを『共通』試験として全国の受験生に課していいものであろうか」(入学者選抜方法検討ワーキング・グループ答申、2018 年7月12日)

 英語民間試験の非公開性を放置した文科省に対し、不信感を募らせている。

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