そこで、本誌は公式ツイッターやフェイスブックなどでアンケートを実施。スナップ撮影の現場で「不快に思うこと」や「トラブルの体験、目撃談」、そして「撮影で気をつけるべきこと」を聞いた。具体的な事例をもとに、写真に関する法律に詳しいみずほ中央法律事務所の三平聡史弁護士の解説を交えながら、スナップ撮影における「適切なマナー」とは何かを探っていきたい。

■現場トラブル02【相手から「警察を呼ぶぞ」と言われたときの正しい対処法】

「不快」「トラブル」ともに寄せられた回答で最も多かったのは、カメラを構えていると「撮るな」というクレームを受けたというもの。話がこじれると、警察ざたに発展することもある。

 3年ほど前、千葉県に住む会社員の男性(58)は、東京・渋谷のストリートでスナップ撮影をしようとカメラを持って街を歩いていた。スペイン坂の入り口あたりでシャッターチャンスを待っていたところ、ふいに警察官から声をかけられたという。

「通りかかったおばあさんから『カメラを持ってウロウロしている人がいる』って交番に通報があってね」

 いきなりの出来事に驚いた男性は、カメラを持っているだけでまだ誰も撮影していないことを丁寧に説明。逆に、事情を聞きにきた警察官からは「私たちも仕事だから。いろんな人がいるから気をつけてね」と同情されたという。

 男性は言う。

「私は何十年もスナップを撮ってきましたが、カメラを持っているだけで通報されたのは初めてです。普段は怪しまれないように小ぎれいな格好を心がけ、街中で通りすがりの人を撮るときには必ずアイコンタクトをして同意を得るようにしています。顔を隠す人や逃げる人は絶対に撮りません。それでも、最近は被写体でない周りの人が文句を言うようになっているので、スナップが撮りづらい時代になったなと感じています」

 この男性だけでなく、「警察を呼ばれた(呼ぶと言われた)」というケースは少なくないようで、アンケートの回答でも散見された。

●盗撮行為と混同され、警察に任意の事情聴取を求められた。(40代男性/会社員)

●警察を呼びに行くと脅かされた。(70代男性/自営業)

●街中で撮影していたらカメラの写る範囲に入っていない男性サラリーマンに絡まれた。「街中で撮影するなんて非常識だ」「警察に行くぞ」と言われた。さらに、「お前は日本人じゃなくて、外国のスパイだろ?」とヘイトぎみの発言まで飛び出して、気分が悪かった。(40代男性/デザイン系)

 日常生活を送っていて警察を呼ばれることはまずないだろうから、「警察を呼ぶぞ」と言われるとそれだけで萎縮してしまう人もいるだろう。だが違法な撮影をしていないのなら、むしろ警察官を前に「身の潔白」を証明したほうが有効だと三平弁護士は語る。

「わいせつ目的など撮影が犯罪行為でなければ、警察には民事不介入の原則があるので、基本的には何もできません。むしろ警察官に撮影データを見せて『街の風景しか撮っていませんよね。犯罪にあたるものがありますか』と聞いてみるといいでしょう。あくまで低姿勢で(笑)。当事者同士で相手がヒートアップして暴力ざたになったということも聞きます。『こちらから警察を呼ぶ』くらいの姿勢でもいいでしょう」

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違法行為がないことを警察官に「立証」する