好調だったのはフェルスタッペン。マシン性能では一歩先を行くメルセデス勢に食らいつき、ボッタスとハミルトンと同じペースで走行を重ねていった。このTOP3は「見えにくい勝負」を激しくやりあっていた。それはタイヤ戦略である。タイヤをいたわるのか、ギリギリまで使うのか、どのタイミングで交換して56周のレースをマネージメントするのか。激しいオーバーテイクも面白いが、こういう見えにくい勝負を考えて観戦するのも面白い。戦略と心理戦、F1の醍醐味でもある。

 ボッタスとフェルスタッペンは2ストップ、ハミルトンは1ストップを選択した。ハミルトンは優勝しなくともチャンピオンを獲得できるが、いささか「攻めすぎた戦略」に見えた。ここ数戦のピレリタイヤの寿命は非常に分かりづらい。安全策を取るならば2ストップでタイヤを使い切る前に交換したほうが良い。ただし、ピットインで25秒ほどタイムを失ってしまう。使い込んだタイヤで25秒を確保するのか、フレッシュなタイヤで25秒を取り戻すかの選択だ。

 フェルスタッペンは3位でレースを終えた。が、優勝したボッタスとの差は5.0秒、2位のハミルトンとの差は0.8秒。レース終盤はフェルスタッペンのペースが速く、ターン12の黄旗(追い抜き禁止)がなければハミルトンを抜けていた。象徴的だったのは終盤、チームに「パワーを上げてもいい?」と無線で尋ね、チームが「OK」と答えたこと。是が非でも勝ちに行く姿勢を見せた。マシンはバンプによってにダメージを負っていたにもかかわらず、今季最強マシンのメルセデスと真っ向勝負ができた。フェルスタッペンはホンダの闘争心に火をつけた。「ここからも難しい戦いになるが、諦めることはない」とコメントし、エースの自覚が芽生えつつあるのを感じる。まだやんちゃなコメントもするが……。

 最後尾まで順位を落としたアルボンは3ストップ作戦を敢行。タイヤとマシン性能をギリギリまで引き出し、実に15台抜きの5位でフィニッシュ。ファン投票によるドライバーズ・オブ・ザ・デイにも選ばれた。闘争心溢れる思い切りのいいドライビングは見事。これでトロロッソ在籍時から9戦連続のポイント獲得。来季もレッドブルからの参戦が濃厚だが、アジア人初の優勝も夢ではない。去年の今頃はフォーミュラEのシートが決まっていて、F1で走ることは想像していなかっただろう。それが今やトップチームに一気に駆け上り、結果を残している。まさにシンデレラボーイだ。

次のページ
悔しい結果のトロロッソ勢