千葉大学大学院医学研究院整形外科学教授/千葉大学病院痛みセンター・センター長/大鳥精司医師
千葉大学大学院医学研究院整形外科学教授/千葉大学病院痛みセンター・センター長/大鳥精司医師
愛知医科大学医学部教授/愛知医科大学病院学際的痛みセンター長/牛田享宏医師
愛知医科大学医学部教授
/愛知医科大学病院学際的痛みセンター長/牛田享宏医師

 加齢とともに増えていくのが腰や股関節、ひざなど「運動器」の痛みです。運動器とは、骨や関節、筋肉など、からだを動かすための部位のこと。運動器の痛みの治療は、「保存療法」と「外科的療法(手術)」に大別され、多くの場合、まずは保存療法をおこないます。好評発売中の週刊朝日ムック『首腰ひざのいい病院2020』では、千葉大学病院痛みセンター・センター長の大鳥精司医師と愛知医科大学病院学際的痛みセンター長の牛田享宏医師に取材しました。

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 運動器の痛みの保存療法には、「薬物療法」「運動療法」「物理療法」などの種類があります。痛みを完全になくそうとすることより、痛みとうまく付き合いつつ、動けるからだやQOL(生活の質)の維持を目指すことが大切になります。

 千葉大学病院痛みセンター・センター長の大鳥精司医師はこう話します。

「痛みがある場合、薬物療法で痛みを抑えることから始めます。痛みが落ち着き、動かせるようになったら運動療法を始めるのが一般的です。痛みが軽い場合は運動をするだけで改善することもあります」

 運動器の痛みの治療に用いられる薬にはいくつかの種類があります。現在は主に、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン)、弱オピオイド系鎮痛薬、抗うつ薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などが使用されます。

 そのなかでも、比較的鎮痛効果が高く、安全性も高いとされているNSAIDsとアセトアミノフェンが第一選択薬です。ただし、痛みの原因によっては別の薬を使用することもあり、第一選択薬で痛みが改善されない場合には、別の作用をもつ薬、強い作用の薬に切り替えることもあります。

 どの薬を選択するかは、痛みの原因や症状の強さ、炎症の有無などにより異なりますが、医師がさまざまな状況を考慮して判断します。薬物療法とならんで保存療法の要となるのが運動療法です。運動療法とは、骨や関節を支える筋肉を鍛えることで、関節への負担を軽くしたり、痛みを軽減したりする治療法のこと。運動には、筋力強化に加え、関節の動きをよくしたり、筋肉をほぐして血行を促進したりというメリットもあります。

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専門医が勧める運動療法