加えて言うと、“隅っこにいる人間”というのは地味で堅実だが、自分をアピールしたいという思いを心のどこかで秘めているものだ。そんなメンタリティも彼らを饒舌にさせるのだろう。ゴール数やアシスト数を常に問われるFW陣はそういう話を聞かれるのはウンザリだろうが、サイドバックは自分が得点に絡むチャンスが少ない分、お膳立てに関与した場合にはいろいろ話したくなる。サッカーの11人の中で少しアウトロー的立場にいることも、彼らの卓越した発信力の源になっている可能性は大いにある。

 そういったサイドバック陣が、実は日本サッカー界や日本代表を力強く支えていることを忘れてはいけない。彼らほどタッチライン際の上下動を繰り返し、数多くのムダ走りを強いられ、攻守両面のここぞいう場面で関与しなければならない重責を担うポジションは他にはない。そのタフさと献身性には本当に頭が下がる。見る側も、もう少しサイドバックの役割を高く評価すべきではないか。

 彼らがピッチ内外で活躍してくれれば、森保ジャパンももっと盛り上がる。長友や内田、安西らに続く「喋れるサイドバックのスター」がこの先も次々と出てきてくれれば面白い。大いに期待したいものだ。(文・元川悦子)