前述のとおり、小浜線乗り入れの「丹後くろまつ号」は、発売開始から数日で完売。購入者の8割は県外者であったことなどから、若狭地域への潜在的な観光需要が感じられた。また、今回は敦賀~小浜の乗車だったが、小浜~東舞鶴には小浜線随一ともいえる若狭湾沿いの景色が待ち構えており、変化に富む車窓は乗っているだけで楽しい。

 JR西日本金沢支社管内では、高岡駅を起点とする「べるもんた」や石川県の七尾線を走る「花嫁のれん」など、観光列車での実績があることから、北陸新幹線敦賀開業に合わせた小浜線での、専用列車での恒常的な観光列車の運行にもぜひ積極的に取り組んでもらえたらと切に感じた。(文/蜂谷あす美)

○プロフィール
蜂谷あす美(はちやあすみ)/1988年福井市出身。実家は越美北線沿いの電器屋。国鉄で車掌まで勤め上げた祖父がいる。高校時代の汽車通学時、鉄道の魅力に突如取りつかれ、鉄道雑誌をこっそり愛読し趣味をはぐくむようになる。慶應義塾大学入学後は、鉄道研究会に入会し、ノリと流れで代表まで勤める。大学卒業後は出版社勤務を経て、紀行文ライターに。25歳でJR全路線完乗を達成。雑誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)で「ミルクを飲みに行きませんか」「わたしの読書日記」連載中。2019年7月に初の著書『女性のための鉄道旅行入門』(天夢人)を出版。